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【マラソン大会攻略の最重要ポイント】秋に「テンポ走」を行う理由

この記事を監修したのは

高山敦史

 パーソナルトレーナー
インフルエンサー

略歴

某大手スポーツクラブでパーソナルトレーニングの顧客数3年連続1位。
その後、独立。ランナー専門のパーソナルトレーナーとして活動し、【YouTube】タカヤマラソン チャンネルにてランニングメソッドを配信中。チャンネル登録者数10万人(2024年9月25日時点)

資格

JATI認定トレーニング指導者

URL

https://takayamarathon.com/profile/

監修者コメント

高山敦史

今回は、夏が過ぎてから行う、マラソン大会に対して特異的なトレーニング、「テンポ走やペース走をメインに行う理由」がテーマです。

さて、今回は高強度走の1つの「テンポ走」についてお話します。
実施される方も多いと思いますし、マラソン大会の記録を伸ばしたい人であれば、確実に必要なトレーニングの1つです。

特に、秋以降はマラソン大会に向けたトレーニングが本格化する時期です。
この時期に、「必須」のトレーニングといえるでしょう。
マラソン大会を攻略していくためには「最も大切」と言っても過言ではないトレーニングです。

今回は、「テンポ走」について詳しく解説し、そして、具体的なやり方と注意点を解説してきます。
今シーズン、「結果を残したい」と考えるのであれば、今回の内容は非常に大切なものです。

過去にもテンポ走については解説しているのですが、今年も夏が過ぎましたので、アップデートした内容でお送りしたいと思います。
ぜひ一緒に学んでいきましょう!

「テンポ走」とは?

「テンポ走」とは?

まず、「テンポ走」ってなんや?、と思った方も少なくないでしょう。

「テンポ走」は、スウェーデン語で「速く動く」を意味するトレーニングです。
これが、市民ランナーの間では、「ペース走」というやり方で広まっていることが多いですね。

「ペース走」は「一定のペースで走る」トレーニングのことをいいます。
なので、「速いペース」でも「遅いペース」でも、「一定のペース」で走ることを「ペース走」と言うのかな、と僕は解釈しています。

そして、高強度のトレーニングとして浸透している「レースペースよりも速く走る」や「ハーフマラソンのペース程度で走る」という高強度のペース走を「テンポ走」と位置付けている、と考えています。

似た言い方でいえば「LT走」や「閾値走」という言い方もしますが、個人的には言い方が違うだけかな、と解釈しております。

「テンポ走」の目的は?

「テンポ走」の目的は、「有酸素能力を高める」、そして、「LT値の向上」という所でしょう。

ちなみにこの2つの「能力」は、「低強度走」や「中強度走」でも、改善・強化できます。
じゃあ、わざわざしんどい「テンポ走」をやらなくてもいいやないか、と思うかもしれませんね。

しかし、トレーニングというのは、「色々な刺激」を入れることが重要です。
そして、「速いペース」というのは、「刺激が強く」、「効果が高い」、つまり練習の「質」が高いのですね。

月間600km走る方であれば、重要度は少し下がるかもしれませんが、市民ランナーの我々が、月間走行距離200-300kmで結果を出そうとするなら、こういった「質」の高いトレーニングは「必須」という事になります。

「LT値」とは?

話は少し逸れましたが、特に重要なのは「LT値」です。

キーワードは「乳酸」です。
僕たちの身体は運動すると、「乳酸」というものが発生します。

「乳酸」について

「乳酸は疲労物質だ!」とか、「乳酸は疲労物質ではない!」という意見はありますが、乳酸の一部は「ピルビン酸」というものに変わり、それが「走るためのエネルギー」として再利用されます。

つまり「乳酸の一部」は、「エネルギー源」となっています。

しかし、体内の「乳酸蓄積量」が多くなると、体内の血液が「酸性」に傾いていきます。
血液が酸性に傾いていくと、代謝機能が落ち、運動機能が低下していきます。
これを、「血中乳酸濃度が上がる」と僕らはよく言います。

なので、「乳酸」は「疲労物質」でもあるし、「エネルギー源」でもある、ということですかね。

「乳酸」と「LT値」

基本的には、どんな運動であれ、長時間運動をすると、乳酸の濃度が上がりますが、非常に緩やかにあがります。

しかし、運動強度が上がっていき、「ある一定の強度」を超えると、急劇に乳酸の蓄積が速くなり、乳酸を処理するスピードが追い付かなくなって、どんどん乳酸が溜まっていきます。
こうなると、血液が一気に「酸性」に傾き、身体が動かなくなる、ということです。

この急激に乳酸が溜まり、処理スピードが追い付かなく地点を「閾値」と言ったり、「LT値」と言ったりします。

つまり、「LT値が向上する」ということは、身体に乳酸が溜まりにくくなり、高い強度の運動をしても、「動き続けることができる」、と理論上はこうなります。

「長時間の運動」をしていくと、最初は何てことない強度でも、例えばランニングであれば、25kmや30km付近になってくると、同じ強度でも、身体は動きづらくなります。
色々な要素はありますが、血中の乳酸が徐々に蓄積していることも、1つの原因です。

「LT値」を向上させるメリット

「LT値が向上する」ということは、乳酸の処理スピードも上がります。
つまり、乳酸をエネルギーに再利用させる能力も、上がるという事です。

この能力が上がれば、フルマラソンの後半でも、血中乳酸濃度が上がりにくくなり、血液が酸性に傾きにくく、後半にもしっかり身体を動かすことができるようになります。

また、例えば、「1km4分30秒」のペースになると急激にきつくなるという場合、LT値を向上していくにつれて、徐々に「4分25秒」、「4分23秒」になっていく、という風に改善することができます。

つまり、「LT値を向上する」ことは、「速いスピードでも動き続ける能力」も向上し、フルマラソンのように長い距離を走る競技であれば、「乳酸の処理」という観点で、必須な能力になります。
「きつくても身体を動かせる能力」が向上する、という事ですね。

そういった所を含めると、フルマラソンだけではなく、ハーフマラソンの選手はもちろん、5000mや1500mの選手にも取り入れた方が良いトレーニングと言えます。

「テンポ走」のペースは?

前置きが長くなりましたが、「テンポ走」というのは、「LT値の向上」、つまり、乳酸の処理速度をあげて、エネルギーに変換する能力を上げていくための、非常に重要なトレーニングになります。

特に今の時期に必要な、「フルマラソンのレースペースに慣れる」、「ハーフマラソンの仮想トレーニング」という、マラソン大会に対する「特異性」にも当てはまります。
その上、「LT値を向上」し、「乳酸の処理能力を上げる」、つまり「代謝系の能力の向上」という、生理的機能の改善というポイントもあります。
「マラソンの後半の失速対策」にもなり得るので、特に今からは、非常に重要なトレーニングと言えます。

ペースの設定

実は「LT値」「閾値」というのは「ここ!」という明確な数値はわからないです。
正確には、市民ランナーの我々は、「測定するのが難しい」です。
専門の機器などが必要になってきますので。

「閾値」の改善には、閾値付近で走る、つまり、乳酸の蓄積よりも、処理する速度が、「ぎりぎり勝っている付近」でトレーニングをするのが、「一番効果的」と言われています。

これが言うなれば、「きついけど、気持ちよく走れている」という強度ですね。
この「きついけど気持ちいい」という、なんとも矛盾した形ですが、「気持ちいい」と言うのは、体感的に「かなり速く走れている」という所から来るのかな、と僕は思っています。

なので、この「きつくてもまだ気持ちよく走れている」という所でトレーニングをすると、「閾値の改善」に繋がります。

これは「ハーフマラソンのペース」とも、「フルマラソンのペースから10秒速いタイム」とも、色々言われていますが、先程もお伝えしましたが、「正確にはわからない」のです。

よく、サブ3.5の走力の人は、「閾値は4分40秒前後!」と言いますし、その付近でテンポ走をする方も多いですが、性別差や個人差はあります。

テンポ走を「4分30秒で10km」できる人がサブ3.5できないことは多々ありますし、逆に、「4分40秒のテンポ走」がやっとの人が、サブ3.5を達成していることもあります。

「LT値」や「テンポ走」だけで、全てがカバーできるわけではない、ということですね。

そして、大切なことは「閾値ぎりぎり付近」ではなくても、ちゃんと「閾値は改善できる」ということ。

大切なことなのでもう一度。
「閾値ぎりぎり」じゃなくても、ちゃんと「閾値は改善」できます。

大体の方は、自分の閾値をちゃんと把握していませんよね?
僕も専門の機械を使ったことはないので、正確にはわかりません。
多くの方がそうですが、正確でなくとも、「閾値付近」でトレーニングをしていけば、ちゃんと「閾値の改善」に繋がります。

例えば、フルマラソンサブ3.5を目指す人であれば、レ―スペースは「4分58秒」です。
ここを目指す方の場合、レ―スペースより10秒速い「4分50秒」付近で、「10km以上のテンポ走」を行えば、「閾値の改善」に繋がります。

人には寄りますが、「4分50秒」は、サブ3.5を目指す方であれば、10-15kmであれば、まあ走れるのではないかな?と思います。
人に寄りますが…

ただし、ある程度「距離」を走らないと、閾値の改善には繋がりません。

ペース設定のポイント

しかし、1人で速いスピードで走るテンポ走は、結構苦手な方が多いのではないでしょうか?
僕も苦手です。

なので、基本的な考えは、「ぎりぎり」を攻めるのではなく、「余裕を持ったペース」で行うことが重要です。

例えば、「4分40秒」なら、確実に10km以上こなせる。
でも、「4分30秒」では、5km以上こなせる自信がない。

こういった場合、皆さまなら、どちらを選択しますか?
意外と後者を選ぶ人は多いのですが、この場合は「確実にこなせる」前者を選びます。

先程も言いましたが、「LT値ぎりぎり」じゃなくても、強化に繋がります。

この場合、「4分40秒」でもちゃんとトレーニング効果を得られるわけです。
しかし、「できるかどうかわからない」設定で行っても、途中でやめてしまうリスクもありますし、トレーニング効果としても大差はありません。

「テンポ走が苦手」という方は、知らず知らずのうちに、自分を追い込んで「速いペース」で行っている、という方が多いかもしれませんね。

「追い込み過ぎない強度」でも効果がある、ということを頭に入れておくことが非常に重要です。
 
これが頭に入っていると、「追い込み過ぎる」ことがなくなりますので、怪我のリスクを一気に落とすことができます。
つまり、1回のトレーニングの強度が上がり過ぎることがなくなるので、「疲労の蓄積」が抑えられる、ということですね。

「テンポ走」トレーニングのステップアップ方法は?

ただ、「速いペースにチャレンジしていきたい」という気持ちもありますよね。

そういった場合、「5000m×2本」や「3000m×3本」というように、「分割」して行い、ペースを「少しチャレンジ」してみる、という方法もありです。

ただし、分割走をだけ行っていても、いつまでたっても「長い距離を途切れさせることなく走る」というマラソンの特異性トレーニングになりません。

なので、テンポ走の段階としては、
 ①分割走
→②8kmテンポ走
→③10kmテンポ走
→④12kmテンポ走
→⑤15kmテンポ走

というように「段階的」に負荷を上げていくようにしましょう。
強度を上げるときは、「一気に」上げるのではなく「徐々に」ですよ。

そして、大切なことは、こういった練習を「継続」させることです。

どんな練習も、1回の練習で効果を出すことが難しく、「継続」することで、少しずつ効果が表れます。
なので、「継続」することが一番のトレーニング効果です。

そこそこの運動強度でも、効果を出せるのはこういった理由です。
逆に言えば、「続けられる運動強度」で、トレーニングを行いましょう、ということですね。

「強度」が高すぎると、次にやるのが嫌になります。
なので、そういった気持ちの観点でも、「そこそこの強度」というのはお勧めです。

「設定タイム」という数値目標は大切ですが、それと同じくらい、「自分の感覚」も大切です。
「クリアできて」、「継続できる」運動強度を探していくようにしましょう。

いかがでしょう。
今の時期から大切な「テンポ走」。
確実にこなせるよう、行っていきましょうね。

監修者コメント

高山敦史

皆さん、いかがだったでしょうか?
僕のYouTubeチャンネルでも解説しておりますので、ぜひご覧ください!

https://www.youtube.com/watch?v=dvWDziWNRG4

本記事のまとめ

まとめ
  • 「テンポ走」は「質」の高い、マラソン大会攻略に必須のトレーニング!
  • 「テンポ走」で、マラソン大会後半、「きつくても動ける」身体をつくることができる!
  • 「テンポ走」のペースは「きつくてもまだ気持ちよく走れる」スピード。確実にこなせるスピードで行うこと!
  • 「テンポ走」の強度は「徐々に」上げよう。「継続」できる強度で行うこと!

出典

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